Tidalで配信されているMQA音源について今日は体感できるか検証してみました!
MQAってなんだっけ?
一言で言えば、CDスペック以上のハイレゾ音源を圧縮する技術みたいです。
へー、なんか良いことあるの?
そもそも、MQAとの接点はTidalという音楽配信サービスでした。Tidalの詳細は以下リンクを見ていただくとして、その特徴はSpotifyにはない高音質の音源を配信しています。
TIDALとは何ですか?
https://tidal.com/whatistidal
以下の図のように、Tidalでは、masterラベルがついている音源があります。
ちなみに、この音源のラベルには以下の種類があります。
CD品質の16bit/44.1khzは、HiFiという表記になり、ほとんどの音源はこの品質以上です。MQAとはこのラベルでいえばMasterとなっているラベルが相当し、これはハイレゾ相当になります。MQA云々の前に、まずはハイレゾとは何?っていうところをまとめてみます。
ハイレゾとは?
ハイレゾ音源はサンプル程度にしか買ったことがありません。意味的にはWIKIの通りなんですが、ちょっとわかりにくいですね。
Wiki
Wikiへのリンク
ハイレゾリューションオーディオ (英: High-Resolution Audio) とは、CD-DAのサンプリングパラメータ(44.1 kHz, 16bit)よりもレゾリューションが高い(デジタル)オーディオのこと[1]。略して「ハイレゾオーディオ」、「ハイレゾ音源」または単に「ハイレゾ」と呼ばれることもある(高分解音質・高解像度音質)。
日本オーディオ協会の図が一番わかりやすいですので引用します。
日本オーディオ協会 ハイレゾ 定義と運用
https://www.jas-audio.or.jp/hi-res/definition
つまり、赤枠がハイレゾの定義です。厳密には、量子化ビット数が24bitでサンプリング周波数が96khz以上のようですね。赤枠の中の黄色部分がそれです。
量子化ビットとは平たく言えば、音の強弱の細かさです。16ビットより24ビットのほうがより、小さい音から大きな音まできめ細かということになります。サンプリング周波数というのは1秒間に採取する音の密度です。cd品質の44.1khzより、96khzとか192khzとかのほうが理論上は高周波まで正確に記録できる密度があります。正しく元の信号を再現するため、サンプリング周波数は記録する周波数の2倍である必要があるようです。つまり、サンプリング周波数が44.1khzであれば、22.05khzまでで、192khzであれば96khzとなりますね。
人間の耳で聞き分けられるかはここでは横においておきますね。
ハイレゾだと無条件に音質がいいのか?
答えは、いいえです。音の良し悪しは、趣味趣向がありますがここでいう音質はより音像が明確で、音の存在が明確なことを指しています。もちろん、人間がですよw
これはアップサンプリングしてデジタル処理した音もハイレゾっていうことになります。実際、ノイズが入った古いアナログ音源をアップサンプリングしてノイズ除去した音源もたくさんあり、これもハイレゾとなって流通しています。また、録音機材や録音条件が悪い(例えばライブとか)マスター音源からハイレゾ音源を作ってもこれはそれなりな音になります。
無圧縮のマスター音源はデータサイズが大きすぎるので、CD規格に収まる16bit/44.1khzのサイズにしているわけですが、それより良い品質にしましょうよということで、ハイレゾ音源というのがあるというわけです。
また配信サービスはCD品質の規格以上でも問題ないわけです。映像の配信データと比べたら、音の配信データなんて小さなものです。Tidalでは、CD品質をHiFiとし、それ以上をMasterというラベルをつけているわけです。
あと、そもそも24bit/192khz 音源は意味がないと言い切っているエンジニアがいます。一度、読んでみると考え方がかわるかもしれませんね。
モンゴメリーさんの 【24/192 音源は本当に馬鹿げている】翻訳
https://nk-productions.net/column/monty-24-192/
MQAとは何か?
これは、今でも実はよくわかっていません。オフィシャルの説明はいろいろあるんですが、すごく大雑把にいえば以下が要点のようです。
(1) 時間軸解像度(音のにじみ)が人間の時間に対する感度(10μ秒以下)相当
→ なんのことですか?(笑)
(2) ハイレゾに比べて、ファイルサイズが小さい
→ 例えば、Flac 24bit/96khz よりMQA Flacはサイズが小さい
(3) ファイル互換性がある
→ MQAファイルでも普通の再生環境で再生できる
(1) は、検証できませんでした。検証する方法がわかりません。
(2) は、実際に比較してみました。(3) は、問題なく再生できました。
TidalのMQAファイルをダウンロードして観察
手持ちのハイレゾとTidalのMQAファイルを比べてみます。まず、Tidalの楽曲は、Donald Fagen のKamakiriad アルバムの1曲目です。曲名は Trans-Island Skywayで、24bit/96khz です。
ちなみにAudirvanaプレイヤーで再生したとき、上記のようにMQAマークの横に青い点がありますが、これは緑色と青色の2つの状態があります。青い色は、MQA Studio品質であることを認証しています。緑は出所が不確実であるか、まだ最終リリースではないことを示すということです。
MQA AUTHENTICATION
http://bobtalks.co.uk/blog/mqa-philosophy/mqa-authentication-and-quality/
Tidalユーザーの方は以下のリンクからその曲を確認できますので埋め込んでおきますね。
https://tidal.com/browse/track/76891279さて、この楽曲をTidal-dlというPythonツールでダウンロードしてみます。
====================================================
CHOICE FUNCTION
Enter '0': Exit
Enter '1': Check AccessToken
Enter '2': Settings
Enter '3': Logout
Enter '4': Set AccessToken
Enter 'Url/ID': Download by url or id
====================================================
Enter Choice:https://tidal.com/browse/track/76891279
+----------------+---------------------+
| TRACK-PROPERTY | VALUE |
+----------------+---------------------+
| Title | Trans-Island Skyway |
| ID | 76891279 |
| Album | Kamakiriad |
| Version | None |
| Explicit | False |
+----------------+---------------------+
100%|▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓| 80.81/80.81 mb
[SUCCESS] 01 - Donald Fagen - Trans-Island Skyway.flac
わかりやすいように、ファイル名は01-Tidal-master-Trans-Island Skyway.flacとリネームしておきました。
$ ll
total 476824
drwxr-xr-x@ 6 junkhack staff 192 2 14 01:11 .
drwxr-xr-x@ 37 junkhack staff 1184 2 14 00:38 ..
-rw-r--r--@ 1 junkhack staff 85081022 2 14 01:05 01-Tidal-master-Trans-Island Skyway.flac
-rwxr-----@ 1 junkhack staff 136805551 11 7 2019 01-Trans-Island Skyway.flac
2つのファイルがあり、Tidalからダウンロードしたものは、約85Mbyteです。もう一つのファイルは日本の配信サイトから購入したものです。flacの24bit/96khz です。
こちらは、ファイルサイズは約136Mbyte です。File コマンドでそれぞれの内容を確認してみると以下のようです。
$ file 01-Tidal-master-Trans-Island\ Skyway.flac
01-Tidal-master-Trans-Island Skyway.flac: FLAC audio bitstream data, 24 bit, stereo, 48 kHz, 18726328 samples
$ file 01-Trans-Island\ Skyway.flac
01-Trans-Island Skyway.flac: FLAC audio bitstream data, 24 bit, stereo, 96 kHz, 37452654 samples
おや? Tidalのは、24bit/96khzではなくて、24bit/48khz とありますね! ここがMQAの(2) 番目のポイントのようです。
これは、調べてみると Music Origami という愛称でMQAの仕組みの1つのようです。
JASジャーナル2015年11月号(Vol.55 No.6)
::
新デジタルコーディング方式 ‐ MQA(和訳) -鈴木 弘明 (P45~57)
すごくわかりやすい資料で(多少謎はありますが)、現在これが一番日本語で書かれた資料として参考になるかと思います。詳細はPDFを参照いただくとして、図を引用してポイントをわかりやすく補足したいと思います。
まず、今回の例で確認した TidalのMQA24bit/96khzのファイルは実際には 24bit/48khz でした。これはCのデータをノイズ領域であるBの120db以下(図中では24khz〜48Khzの紫の部分)に”折りたたまれる”とのこと。
ほほー、なるほどねー。確かに、120db以下なんてアンプのノイズで消されちゃうし、人間の耳のダイナミックレンジは120dbということなので問題なさそうです。ちなみに、24bitでは144dBの音の強弱を数値化できます。32bit では、192dBです。図中の-144db〜-168dbあたりは何を表現しているのでしょうか?いろいろ謎が多い資料ではあります。不明なポイントとしては、以下ですかね。
・CのデータがB領域の120db以下にロスレスで収まるのか?
・Bの領域のデータが120db以下にロスレスで収まるのか?
・24bitでは144dBだが、図中の-144db〜-168dbあたりは何を示しているのか?
おそらく、BやCの実際のデータ(おそらく120db以下をカット)は大きな音量レベルでは記録されていない(0データが多い)のでロスレス圧縮すれば収まるのかと想像。しかし、3番目については理解不能です。
実際にMQAレンダリングできるDACで聴感の違いは感じるか?
過去の実験から、AAC320kbpsの音源とFlac16bit/44.1khz ではなんとか音の違いを感じることができました。しかし、これもギリギリなんとか違いを見つけられたくらいです。Flac16bit/44.1khzと、Flac24bit/44.1khzでは聴感では違いを見つけられませんでした。そして今回、聴感の違いを比較する対象は、改めて書きますと以下となります。ハードウェアMQAレンダリングだと24bit/96khz以上のMQAファイルでないとDACの本領を発揮できません。まずは、この楽曲で確認してみました。
(1) 24bit/96khz MQA Flac
(2) 16bit/44.1khz Flac
Tidalでは以下の楽曲となります。Jack Johnson (ジャック・ジョンソン)のBanana Pancakesです。他も何か見つけたら追加しておきます。以外に見つけるのが難しいんですよね。まぁ、これも1つの楽しみですか?w
TidalユーザーでMQAデコード(これはMQAのDACがなくても可能)できる環境であれば比較してみてください。
24bit/192khzのMQAファイルでも試して見ました。こちらはMQAハードウェアデコードが必要です。
(1) 24bit/192khz MQA Flac
(2) 16bit/44.1khz Flac
192khzのMQAと音圧レベルが違うので、自動ゲイン調整を使っています。MQAファイルのほうが、音圧レベルが低かったです。違いといえば、そのくらいでしょうか?w
自分の結論は、まぁ予想通りというか判別不能でした。言い訳となりますが、16bitか24bitかの違いを体感するのは、相当S/N比の良いノイズがない環境で試さないとNGです。ノイズが少ないDACにヘッドフォンをつけてやっと違いがわかるかという程度のものですが、それでも自分には無理でした。
また、サンプリング周波数の違い44.1khz と 96khzの違いを体感できるかという点においては、細かな音の出方を観察しましたが、これも判別不能でした。1つ1つの音の出方というよりも、全体の雰囲気が違うと思うのですが、ブラシーボなのか明確な違いなのかしっかりと判別することができませんでした。
また、MQAのいう(1) の時間軸解像度(音のにじみ)という部分についてもまったくわかりませんした。
まとめ
今回、なんとなくわかったのは以下となります。
・16bit/44.1khz Flacと、24bit/96khz MQA Flacの違いは聴感上、体感できず。
・ハードウェアデコードするなら、24bit/96khz以上のMQAファイルが必要。
・MQA 24bit/96khzファイルは同条件と比較して、約136Mbyte→約85Mbyteまで小さくなっていた
・少なくとも、自分にとってはハイレゾもMQAもオーバースペックで無駄
・ハイレゾとCD品質のFlacを正確に聞き分けできる人っているのかな?
・しかし、曲によってはSpotifyの320kbpsとFlacまたはMQAファイルの違いは体験できる。ここにTidalの価値を見出す!
・検証中、発見したTidal-dlは神ツール! これでTidalの価値がまた上がりました
・今回購入したMQAレンダリングできるDACは、MQAのオマケとして考えよう
・人にオススメするとしたら、S/N比120dbの32bit/384khzのDACで十分かな!
・これは2000円〜4000円くらいで買えます
・MQAを体験してみたい人は7500円でこのDAC(Hiby FC3)を買ってもいいかもです
・しかしTidalのオフィシャルアプリでは今の所、DACのハードウェアMQA再生はできません。
・Winか、MacならAudirvanaプレイヤー(1万円くらい)が必要
・androidなら、UAPP(USB Audio Player Pro)850円と、MQA Studio Master Quality(450円)が必要。それ以外のアプリもあるかもですが。
・iPhoneは未調査ですが、Amarra Play があるようです。
・macでDACに排他利用する場合(MQAハードウェアデコードする場合は必須)は、coreaudio を通さないのでmac側で音量調整やバランスなど各種フィルタは使えません。
あとがき
今回はMQAとしての価値がDACにあるか、その聴感上の違いを体感したのですが明確な違いはわかりませんした。こういうのは、人や機材によって変わると思うので、Tidalユーザーはぜひ、チャレンジしてみてください。
今の所、聴き放題サービスとして、SpotyfiとTidalは継続していこうと思います。Spotyfiは外部APIからのアクセスができない仕組みなので、こういうところはTidalが有利ですね。
MQA環境にしたら、明確な違いがわかったよという方がいたらぜひどこかで発信してください。それが良い方向の記事でも悪い方向でも、検索でいつか辿りつけるはずです。あと今回、世界中のフォーラムも見て回ったのですが、MQAに対しては否定的な意見も見受けられました。でも、少なくとも面白いアプローチだと自分は思います。まずナンセンスなハイレゾ音源商法に終止符をうって、MQAブルーマークが付いていれば、それはほぼマスター品質と変わりないよと認証するその全体の仕組み作りとしては評価しても良いのではないかと思います。無圧縮のマスターと比べて、ほぼ違いがなく、それがマスター保持者から認証されるのは消費者としてはアリだと思います。多分、24bit/96khzのMQAで今のマスターデータとほぼ遜色ないレベルを保てるはずだと思います。そもそも人間の耳で判別可能かどうか怪しいものです。マスター保持者が聴感上、認識するのではなく、機械的にマスターデータとMQAデータを比較してxx%の差なら、認証するというようなことでOKではないかと思うのですが。
それ以上のクオリティーを求める人はマーケット的にも少数でしょうし、別途で販売するなり提供するなり、なんとでも対応方法はあると思いますが。
でも、MQAファイルを作るロジックはオープンソースにすべきです。MQA組織側は認証の手続きやマスター保持者(メジャーレーベル)とのやりとりに特化すべきだと思いますね。Win Winになれるスキームは作れそうなんじゃないかと思いますが。
著者にメッセージ
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